わいわい塾

開催レポート

2014年3月 (有)石橋屋

2014/03/19

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おでんやがめ煮、豚汁にも欠かせない蒟蒻(こんにゃく)。美味しいだけでなく、低カロリーで、お腹の調子を整えてくれる体によいとおなじみの日本の食品です。

 

 本日のわいわい塾では、有限会社 石橋屋の代表取締役 石橋 渉さんにお越しいただき、「蒟蒻を世界へ!」と題し、おなじみ過ぎて少し地味で控え目な存在の蒟蒻を、どのように世界へ広められたのか、たっぷりお話していただきました。 

有限会社 石橋屋

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福岡県大牟田市で明治10年に創業。大牟田と言えば蒟蒻芋の産地ではなく炭鉱の町。粉じんの舞う炭鉱で働く人たちが「お腹の砂おろし」として、あえて蒟蒻を消費していたこともあり、蒟蒻のお店が増えたと言われています。

昔、蒟蒻は近所の八百屋などの商店で売られていました。スーパーマーケットなどが全国に出店し、どこでも同じサービスが受けられ、商品の均一化、安心で安全、値ごろ感のある物が普及するようになり、日本の食文化が創業当時とは大きく変わっていきました。昭和51年に社長が就職した頃は、家族で朝早くから一生懸命蒟蒻を作ってもなかなか儲からない・・・という状況でした。

平成になり、自身が代表になると、手作り蒟蒻にこだわっていた先々代からの「バタ練り」製法と合わせて、工場の機械化を進め、安い蒟蒻をスーパーマーケットに卸し、大量に販売するようになりました。

当時の売り上げは、3割が手作り商品で6割が機械化の商品でした。

利益は少ないですが、たくさんの商品を売っていた時期、自分の作った商品に自信が持てず「こんなことでいいのかな・・・」と考えるようになりました。

本物の商品を作りたいと原点回帰、機械による蒟蒻の製造をすべてやめ、手作りの製法「バタ練り」一本に絞り込むことを決意しました。毎日ただ蒟蒻を作っていただけのつもりが、いつの間にか蒟蒻の「職人」になっていたのだと思います。まだローンの残っていた全ての機械を処分し、市内にあった工場を、水が綺麗な山あいの現在地に移設しました。

こだわりの製法「バタ練り」

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蒟蒻のおいしいさを追求した結果、先々代からやっていた「バタ練り」という、独特の製法で蒟蒻を作っています。蒟蒻のりを羽根が付いた衣装ケース程の大きさの箱に入れ、よく練ります。その時に「バタ バタ バタ」と音がなるので「バタ練り」と呼ばれています。機械でバタバタ練り合わせながら、手を入れて感触をつかみながら作る・・・まさに職人の技が必要で、非常に手間がかかり、大量生産が困難です。現在ではこの製法で製造する蒟蒻メーカーは国内では数軒しかありません。バタ練りで作った蒟蒻には、中に気泡ができており、これがサクサクした歯ごたえの良い食感を生み、料理の際にはだしなどの味がしみ込みやすく、蒟蒻のおいしさの秘訣です。

全ては好奇心から始まった。

syatyou2.jpg大牟田の蒟蒻を福岡の人が食べたら?百貨店で売ったら?アメリカ人が食べたら?

 

・国内での販売展開

石橋屋の蒟蒻はこだわりの商品なので、ディスカウントショップなどではなく、百貨店や高級スーパーで販売したい!しかし、商品は作ることはできても、販売ルートを持たないため、熱意だけを持って百貨店へ飛び込み営業を開始しました。

 こちらからの条件3つだけ

1.朝から晩まで自分でやるので、3日間だけ販売させて!

2.売り上げの3割は百貨店にお渡しします!

3.もしも売れたらその場で「定番」に入れることを考えて!

 YESをもらったらあとは一生懸命やるだけです。一流のお店で定番になることを目指して頑張りました。

百貨店などは売れた数だけを見ているわけではなく、売れなくてもどれだけ一生懸命やっているか、を見ています。とにかく一生懸命やり、少しずつ販路を広げ、「ブランド」と言われるようになり、百貨店や高級スーパー、大型スーパーの定番として扱ってもらえるようになりました。

・海外での販売展開

平成14年、シンガポールにある日系の百貨店で九州フェアをやるので、石橋屋の蒟蒻を出展してみないか?とのお話をいただきました。日本人は少ないし、暑い所であつあつのおでんや煮物はキツイかな・・・と思っていたところ、中国人の多い地域でもあったため、蒟蒻のコリコリ食感がばっちりで大ウケしました。

中国の人がOKなら色々な国でも行けるんじゃないか?と、東南アジア、ヨーロッパ、アメリカと世界規模で蒟蒻を販売していくことになります。

しかし、サクサク、カリカリした食感やスパイシーなものを好む欧米人にとって、蒟蒻は独特の食感、匂い(魚臭い)、色、すべてにおいて苦手のようでした。蒟蒻を食べない欧米人にも食べてもらいたいと、新たな商品を開発していきます。

発想の転換 ~世界でも受け入れられる蒟蒻の開発~

konyakumen.jpg① こんにゃく麺 (蒟蒻を知らない人に知ってもらうためのツール)

「和食」が世界で認められるようになったのも、握り寿司がその国の文化に合わせてロール寿司になったり、その国の文化とうまく融合していったからだと思います。蒟蒻を世界に広めようとするときも同じです。コーディネーターとしてヨーロッパ勤務経験のあるシェフを雇い、洋食の三原色(食欲をそそる色)の赤(ニンジン)と緑(ホウレンソウ)と黄色(かぼちゃ)の麺を開発。手打ちの蕎麦屋で実際にそば打ちを勉強し、麺のうまさの一つである「のど越し」についても研究しました。敬遠された食感やにおいを変えるため、穀物を配合したり、麺の断面に溝を掘ってたれが絡みやすいようにしました。試行錯誤の末誕生したこんにゃく麺は、水洗いしてたれをかけるだけで食べることができ、中国や韓国、アメリカやフランス、ドイツなど現在では20カ国で販売しています。

② コンジャック・パウダー(原料として展開)

販売する商品が手作り蒟蒻からこんにゃく麺に変わると販路も変わってきます。

日本では良い商品は百貨店やスーパーから広まることが多いですが、海外ではシェフから発信されることが多いです。商談の時に、アメリカ人シェフから2000年のBSE問題の時、欧米では料理によく使われていたゼラチンが使えず、ゼラチンの代用品として寒天が重宝されるようになったという話を聞きました。そこで「コンジャック・パウダー」を開発することになりました。大学と蒟蒻の効果効能について共同研究し、(生活習慣病の予防と糖尿病治療の研究をマウス実験で行い新規糖尿病予防薬あるいは治療薬としての可能性が示唆された。)世界に蒟蒻を広めていきました。

③ インスタントコンニャク

原料として開発したコンジャックパウダーに水を入れ混ぜあわせる。それをビニールに入れて冷蔵庫で3時間おくと蒟蒻ジェルになります。これをデザートやハンバーグに入れたりし、蒟蒻をその国々の料理に合わせて使ってもらえるようになりました。たくさん食べたいのにカロリーが気になる、健康志向・安全志向の世界中の人たちに美味しい蒟蒻を知ってもらうことが出来ました。

石橋屋の経営理念

石橋屋流「身の丈経営」の継続

1.必要なものは工夫して自分たちで作る

2.無理はしないし続かないものはしない

3.だから無駄なものはうちの会社にはない

行動理念

常に、瞬時に判断し、毎日最高の蒟蒻を作る。

目標

社員一人一人が誇りを持ち、こんにゃく文化を世界に拡げる。

今後の展開

第4回ものづくり日本大賞をはじめ、数々の賞を受賞しました。

授賞式には社員の方と一緒に行くそうで、このような賞は社長や会社がもらうのではなく社員一人一人がもらうものだと思っています。

最近では、九州大学や中村学園大学、カゴメ(株)や一番食品(株)と産学官共同研究として「微細化コンニャクグルコマンナンを用いた食機能増強食品の開発」を手掛け、高齢化社会を迎えた国内の市場への貢献を目指しています。

今後の目標は、蒟蒻を通じて、食品業界・日本社会全体へ貢献することです。

<質問コーナー> 

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蒟蒻芋の産地はどこですか?

90%が群馬県産です。地元で蒟蒻芋を作りたいと考え、農業に参入する予定です。大牟田はイノシシの被害がなく、中山間地域で作りやすい。先日、トラクターや軽トラなどを購入したばかりです。新しい経験をすると新しい展開があるかもしれないと思い楽しみにしています。

どのくらいで蒟蒻芋はできるの?

成長するまで3年かかります。自生するくらいなので手間はかからず、植えっぱなしで大丈夫です。

 

海外に輸出している蒟蒻の原料は国産ですか?

そうです。最近では海外からの蒟蒻芋も輸入されてはいますが、蒟蒻芋は関税が高いです。

食べる前に塩でもんだり、茹でたりしないとダメですか?

「バタ練り」蒟蒻は、適度に空気が混ざっており、味がよくしみ込むのが特徴です。使う時は、ボールの中でよくモミ洗いしてください。(蒟蒻の中に入った水を入れ替える感じ)塩でもんだ方が、魚と一緒でにおい成分のトリメチルアミンを取る効果もありますが、水洗い後、生でお刺身として食べいただけます。

蒟蒻の賞味期限はどのくらいですか?

蒟蒻芋の主成分はグルコマンナンで、水に溶いた後固めるために水酸化カルシウムを入れています。いわゆる「灰汁」で、石橋屋ではホタテの貝殻を焼いたものを使っています。そのため、蒟蒻自体が高アルカリ食品になり、それをアルカリ濃度の高い水に入れて高アルカリを保ち、腐敗を止めています。国内では4か月、海外では1年としています。

どこで販売されていますか?

岩田屋や西鉄ストア、イオン、ゆめタウン、ハローデイなどで販売しています。売り上げは東京大阪名古屋で6割を占め、九州内で2割、海外で2割となっています。

冷蔵庫の奥に入れっぱなしになっていた蒟蒻が、出してみるとボロボロになっていました。どうしてですか?

冷蔵庫の奥で凍ってしまったのかもしれないですね。一度凍るとお麩のようになります。アルカリ濃度が低くなると蒟蒻は溶けてしまうし、高すぎると蒟蒻の弾力がなくなってしまいます。

保存方法は?封を開けていなくても冷蔵庫に入れた方が良いですか?

暑いところ、寒いところは避け、汗をかかせない様にしてください。

<感想などアンケートの声 印象に残った点(一部)>

  • 非常に明るく、大きな声で楽しくお話が聞けました。身の丈経営、行動理念、目標などは社員教育のようで、心に響きました。
  • 海外への展開の経過がよくわかりました。
  • 社長の悲壮感がないポジティブな性格が発展の基になっていると感じました。
  • 蒟蒻は慣れ親しんでいる食材ですが、「バタ練り」という言葉は初めてききました。「バタ練り」の様子が見てみたかった。
  • 数年前からうちは石橋屋の蒟蒻を食べており、ミニ蒟蒻を常備しています。二人家族なのでミニサイズが最適です。
  • 汗をかく、動く、をモットーに、現在まですごい努力により海外にまで・・・すごいです。社長のお話が上手なこと!すごくユーモアがあり分かりやすくて最高で、聞き入ってしまいました。
  • 九州の福岡にこんな素晴らしい企業があったのかとびっくりした。
  • ミニしらたきは「きんぴら風」にして食べましたが本当においしかったです。他の商品も早速買ってみたいと思いました。
  • 蒟蒻の印象が変わった。社長のお話を聞いてより一層おいしく感じます!
  • 今日は蒟蒻が主役になった日です。向上心・努力・愛情で蒟蒻づくりに取り組んでいることを肌で感じて大変好感が持てました。石橋屋の蒟蒻も食べたことがあり、まさか社長さんのお話が聞けて本当に良かった。
  • 蒟蒻はカロリーが低いので良く使います。
  • 小さな一商店が海外で成功されたことがよく分かるお話だった。
  • 固定観念を超えた発想が素晴らしく、恥をかく・笑われるという重荷が吹き飛び、聞いている私も自信をいただきました。今後も期待しています。
  • 石橋屋の蒟蒻は以前から我が家の定番の蒟蒻です。たまたま1度購入したら、美味しくてほかの商品は使えなくなりました。手作りで大量には作れないかもしれませんが、これからも作り続けてほしいです。
  • たかが蒟蒻、されど蒟蒻!蒟蒻の魅力を創生されてきていると思う。
  • 信頼できる商品・企業だと思う。これからの商品にも期待したい。
  • 社長のお話から、社員への思いやりを強く感じました。
     

<試食の感想は>

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 今回、バタ練り蒟蒻と、蒟蒻麺(かぼちゃ)を試食しました!

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 「こんなに歯ごたえのある蒟蒻は初めて食べました。とても美味しかったです。
  • 「これを食べたら他の蒟蒻製品は食べられないよ」と言っていた意味がよく分かりました。
  • こりこりした歯ごたえがとてもよかった。
  • 味が中までしみこんでいてとても美味しかった。
  • 蒟蒻自体の味が濃く、弾力性がすごくあり本当においしかったです。
  • 刺身蒟蒻で食べられることに魅力を感じます。
  • 調理前はお湯で一度湯がかなくても水洗いするだけで良いとのこと。知りませんでした
     

<蒟蒻の可能性>

  • お菓子(グミみたいな)作りはいかがでしょうか?
  • ローカロリーなのでケーキや和菓子などがあるとダイエットに期待できそう。
  • いろんな味が染みやすいので、脇役ではなく主役にして蒟蒻を楽しみたい。
  • カロリーカット出来るので、パンやうどん製品はどうでしょうか?
  • 肥満と糖尿病予備軍と診断された時、頼りになった食品が蒟蒻でした。医療面でも重宝される食材であると思います。
  • 煮物だけでなく、だし麹で炒め煮で食べています。レシピの発信もお願いしたいです。

 

 

 

企業情報

有限会社 石橋屋
〒837-0902 福岡県大牟田市上内529 
[TEL]0944-58-6683 [FAX]0944-58-7930

http://www.konjac.jp/