わいわい塾

開催レポート

2013年11月 福萬醤油有限会社

2013/11/20

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きき醤油テイスティングで、8割以上の確率で銘柄を当てることができる醤油ソムリエでもある、福萬醤油有限会社の7代目社長の大浜大地さんにお越しいただきました。

福萬醤油の歴史や、独自に開発された「スプレー醤油」「塩分0%仕込み醤油ソイゼロ」等のお話を詳しくお伺いしました。

福萬醤油有限会社について

福萬醤油は、福岡市中央区天神三丁目にあり、屋号の由来は福岡市の「福」、昔の地名である萬町の「萬」を取って「福萬醤油」という名になりました。創業は1821年、黒田騒動後侍から商人になった先代が後に、黒田藩のお抱え醤油蔵となったのが始まりです。

醤油屋は全国に約1,500社、福岡県にはそのうち110社あり、福岡県は醤油どころと言われています。昔、この天神地区は埋め立て地で、豊富な水や良質な塩の恩恵を受け、醸造街として発展していました。

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7代目の大浜さんは、元々8年前に福萬醤油の跡地でオリーブオイルの輸入販売をしておられました。輸入元のスペインの人から「輸入するだけではなく、日本の何か良いものを紹介して欲しい」と言われ、大家である福萬醤油の創業家の白木さんに相談したところ、日本の発酵食品である「醤油」を思いついたそうです。

福萬醤油は福岡市の上久醤油や宗像市の中丸醤油の親戚筋であり、蔵をのぞいてみると、昔店舗に飾ってあった金看板も見つけました。「君がやってもいいいよ」という白木さんに背中を押されて、醤油の勉強を始め、6年前に福萬醤油を復刻し現在に至ります。

 

 

醤油テイスティングバー 醤油テイスティングバル 福萬醤油

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まず、醤油を作るというよりは、醤油を食べる、買う消費者目線でできることを考えました。醤油は黒く、見ただけでは味や香りはわからない・・・ということで、日本初「醤油テイスティングバー」をオープンしました。

最初は親戚筋のお醤油16種、現在では全国のお醤油約300種を取りそろえ、香りや味をテイスティングしながら、醤油の購入、ランチなどの食事ができるスペースを提供しています。

九州醤油だけでなく、パンやヨーグルトにかけるスイーツ醤油、スモーク醤油など新しいものを開発しています。1本あると炒めるだけ、煮るだけでも料理の味のバリエーションが広がります。

ぜひ「マイ醤油探し」を楽しんでみてください。

九州のお醤油の味比べ

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福岡、大分、鹿児島の刺身醤油を食べ比べてみました。

南にいくほど甘くなり、県別で味や甘みが全然違うことが分かりました。

そもそも醤油はその地方で取れる魚に合わせたものになっているそうで福岡だと鯛などの白身魚やイカなどに合うようにさらっとしています。

大分では、鯵や鯖などの脂の乗った光物がよく取れるので、魚の脂に負けないような甘味ととろみが特徴です。

鹿児島になると、脂がとろとろにのったカンパチや鰤に合わせてより甘みの強い醤油になっています。魚の脂身と醤油の甘味が合わさると旨味に変わると言われています。

参加者からは、「食べ慣れている福岡の醤油の味が良い」「鹿児島のは甘ダレみたい」「同じ九州でもこんなに違うとは知らなかった」との感想をいただきました。

 ブームとなった「卵かけ醤油」は、もともと熊本の橋本醤油醸造元が作ったものです。当時地域のPTA会長をしていた社長が朝ごはんを食べない子供が多いことを懸念し、子どもが自分で簡単に食べられるものはないかと、ご飯に卵、醤油、甘みを加えるために刻んだ昆布をのせて簡単に食べられるよう子供のために作られたものでした。いろんな醤油屋さんにも作ってほしいと商標を自由にしたため、各醤油屋も作り始めてブームとなりました。

九州だけでも県ごとにだしの好みがあり、福岡や鹿児島はかつおだし、佐賀は有明のりだし、長崎はあごだし、熊本は昆布だしで人吉に行くとかつお昆布だし・・・というように地域ごとに味や好みが異なっています。

醤油の香り比べ ボトルVS.スプレー

ボトルから醤油を注いだものと、その半分以下の量をスプレーで吹きかけたもので香り比べをしてみました。スプレーで吹きかけたものの方が、醤油の香りが一気に開いたのがよく分かりました。

 

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独自に開発されたスプレー醤油

きっかけは、仕事で訪れていたスペインで、料理の仕上げに調味料をスプレーで吹きかけることにより、調味料の香りがわっと広がり食欲をそそられる、そんな体験からひらめきました。

スプレー醤油の狙いは、

①調味料の香りを楽しむこと

②食後の皿に残る無駄な醤油をなくすこと

③1回の使用量は0.1mlなので、減塩効果が期待できること

です。

①それを醤油でやろうと思うと、スプレーは醤油の塩分により、すぐにつまってしまうし、またスプレーのスプリングが腐食してしまい、醤油の味や香りが悪くなってしまう。

そこで、つまらず、腐食もしないスプレー容器の研究や、醤油をろ過して塩分を細かくするなど醤油作りを2年も試行錯誤し、スプレー式醤油を開発しました。

②焼き魚で醤油をただかけてしまうと、食べ終わった後にたくさんの醤油がお皿にあまり、捨てられてしまいます。お醤油の3分の1は捨てられていることが分かりました。ワンプッシュで0.1mlなので適量を少しずつ調節しながら使えば、使う量も減るし捨てる量も減らせます。

③減塩効果

WHO(世界保健機構)でも高血圧や心疾患予防のため塩の摂取量を現在の平均値の半分以下となる1日5g以下との目標を掲げています。

醤油の美味しさは「香り」にあると言われており、適量を使うことで塩分の減量と、味の両方を満足させることが出来ます。ワンプッシュ0.1mlの醤油の塩分量は0.02gと少量です。

昨年広島の呉市で開催された「減塩サミット」には医師や栄養士、また減塩で悩む方が2万人ほど参加され、塩分を取れない中でいかに美味しく食事をするかが話題となりました。塩分ではなく香りで醤油を楽しめれば、減塩効果は大きいと非常に高い評価をもらいました。

第2のスプレー第3のスプレー

第2のスプレー、塩分0%仕込み醤油「ソイゼロ」

高血圧の患者さんたちは塩分摂取量が一日3g以下という厳しい食事制限がなされています。

塩や醤油、味噌だけでなく、食材自体にもミネラル分として塩分が含まれており、3g以下というのは非常に厳しい数字です。そこで塩分0%仕込み醤油を福岡県醸造組合が開発し、スプレーにより醤油の香りと旨味を楽しんでいただけるように作りました。当初は医療業務用としてドラッグストアや調剤薬局で販売されていました。

お刺身やお豆腐にかけるだけでは物足りないかもしれないが、通常の醤油と塩分ゼロのものを両方使えば量は2倍で塩分半分となります。焼き魚やお漬物などもともと塩分のあるものに適しています。

第3のスプレー、塩分0%仕込み酢醤油「スッシュッ」

塩分0%仕込みの酢醤油です。塩分0%仕込み醤油に酢酸菌をプラスしました。

最後に・・・

色々な方からの喜びの声をいただくことが励みとなります。

実際に祖母が高血圧だったこともあり、食生活を変えることで効果があることを実感しました。

新商品「塩分ふり~かけ(ふりかけ)」も開発しました。

福萬醤油は「減塩」「塩分0%仕込み」減塩を支える商品をメインに展開していきたいと思います。

 

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わいわい塾後半には、醤油テイスティングバー福萬醤油に移動し、実際にお醤油のテイスティングをさせていただきました。カウンターに並ぶ醤油の数にもびっくり。 1つ1つの醤油を食べ比べてみると、味も香りも全部ちがいとても興味深かったです。

 

 

 

 

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お土産にスプレー醤油と塩分0%仕込み醤油「ソイゼロ」を参加者全員にいただきました。

 

 

 

 

 

 

<参加者と企業の質問コーナー>

お醤油の甘さの成分はなんですか?

福岡から長崎までは昔シュガーロードと呼ばれた長崎街道あり、砂糖が手に入りやすかったので共通で水あめを使用しています。南の藩である熊本や鹿児島は甜菜です。醤油のラベルには「サッカリン」となっています。甜菜からできた「サッカリン」は砂糖の10倍の甘さがあり溶けやすく醤油屋には欠かせないものです。カタカナで書いてあるものは保存料など化学物質で体に悪いような気がしますが、「ステビア」も同様安全な甘味料です。

お醤油の賞味期限は?

日光に弱いので色が濃くなったり香りが変わりますが、醤油は発酵し終わっているのでこれ以上腐りません。ワインや日本酒に賞味期限がないのと一緒ですが、醤油は食品なのでだいたいが1年と記載されています。ただ、だしなどのブレンドされた醤油は1年です。味や香りが変わってしまった醤油は蛍火で30分くらい火入れをすると香りが戻ってきます。使い切れなかった醤油は、同量のお酒を入れて煮切ると魚茶漬けのたれになるし、それにみりんを入れると煮物ダレになります。

醤油も高い物から安い物まで値段の幅がありますが、やはり安い物は良くないのでしょうか?

安くても悪い物ではないです。 単に醤油屋さんの努力で薄利でやっているんだと思います。醤油1本で利益が一円にも満たない・・・では品質やモチベーションを保つのは難しくなります。ワイン業界のように本当に良い物の価値を見出し、醤油づくりの方法や添加物の説明、見やすく分かりやすいラベル作りの必要性を感じています。

醤油の消費量はどのくらいですか?

20年前と比べて生産量は半分になりました。単純に使う量が減ったためです。また昔は土間があり、醤油は一升瓶で買われていました。現在は、だいたい小世帯でのひと月の使用量が100mlです。醤油は3か月内に使い切れる量を買うと良いと思います。季節ごとに醤油を変えるなどして、食生活に刺激を与えていただけるといいなと思います。

醤油の塩分はどのくらいですか?

九州のお醤油は無添加の本醸造だと17%です。大阪に行くと18%、北海道だと22%です。緯度が上がるほど塩分も上がっています。寒さや暑さに比例しているようで、塩分が高い方が身体を温めるからです。

醤油を置いていると 白いカスが浮かんでいることがあります。こうなったら捨てるべきでしょうか?

カビが生える醤油は、添加物が入っていない良いお醤油です。醤油の特性として大腸菌やサルモネラ菌を醤油に入れると一日で死滅させるほどの殺菌力があります。保存料が入っていないと、注ぎ口のところからカビが生えてしまいますが、それを取るだけで大丈夫で、醤油には影響しません。どうしても気になるのなら、火入れをすれば大丈夫です。

<感想などアンケートの声 印象に残った点(一部)>

  • 歴史ある町での醤油作りの再開、昔ながらにこだわらず若い感性でスプレータイプを作られ斬新ですね。ついつい多めに出してしまう醤油、グッドアイディアだと思います。香りを感じ、減塩効果もあり、言うことなしです。
  • スプレータイプのアイデア、とっても良いと思います。食塩制限の人にお勧めしたいです。減塩に貢献できると思います。
  • 全国1500社、福岡でも110社、醤油の味の広さにびっくりしました。食材によって使い分けたりがこれから楽しめそうです。
  • 北と南の塩分の違い、一回の使用量での塩の量、古くなって香りの変化した醤油の復活の仕方など、おもしろく勉強ができました。
  • スプレー醤油が「醤油を捨てないでおこう」ということから始まり、減塩になることが印象に残りました。血圧が気になるので良い取り組みだと思う。
  • 醤油について初めて聞くことも多く参加してよかった。
  • 九州と本州の醤油の違いについて初めて知りました。減塩への取組もすごく良いと思う。
  • 醤油のイメージが大きく変わりました。いろいろな醤油を試して楽しみが広がりました。
  • 減塩のためにはスプレー醤油が効果的。また塩分0%の醤油、酢醤油にはびっくり。それなのに香りとうまみが深いのには驚きました。
  • 雲丹醤油が絶品でした!お酒のテイスティングも良いですが、醤油でとても楽しかったです。時間が足りなかったのが少し残念でした。またゆっくりランチしてみたいです。
  • 醤油のテイスティングバーはテレビで見たことがあり気になっていました。新しい取り組みで興味津々です。大浜さんの熱い思いも聞けて良かったです。
  • お店の感じがとてもよかった。この取組をもっと広告しても良いのではないでしょうか。
  • 新しいお気に入り「マイ醤油」を探してみたいと思いました。
  • お醤油の種類の多さに驚きました。いろいろ試してみたが食べなれた福岡の味が良いと思ったが、料理によって醤油を使い分けするのもいいですね。
企業情報

福萬醤油有限会社
http://www.soywine.jp/


福岡市中央区天神3-6-9 白木ビル2F
TEL 092-737-8920