わいわい塾

開催レポート

2017年5月 独楽工房 隈本木工所

2017/05/30

八女の地で創業して100年を超える隈本木工所さん。6代目の隈本さんは、伝統的なおもちゃや、ろくろ技術を大切に継承する一方、3D加工もできる機械を導入したり、デザイナーを活用したりするなど、新しい取り組みにも積極的です。

 

 

 

 

 

 

 

 

隈本木工所の製品の3つの特徴

①木の温かみを活かした丸みのある優しいかたち
「ろくろ」というのは、くるくると回す装置のことです。回しながら、陶芸なら粘土を伸ばし、木工なら木材を削って形を作り出します。丸くて手になじむ、優しい形状になるのが特徴です。

 


②インテリアとして飾っておくこともできるデザイン性
部屋に飾ってもらえるような、デザイン性のあるものであることを意識しています。子どもが遊び終わって飾っておいたものを、いつか次の子どもが手に取って遊ぶ、ということがあるように。そのために、デザインはプロの方にもお願いをしています。

 


③安心・安全な木材と塗料を使用
木材は、九州産のものを中心に、生産地のわかっているものを使います。生産地である森に関心を寄せることで、森林の保護にもつながると考えています。
仕上げの塗料には、ドイツのリボス社とオスモカラーの自然塗料を使用しています。植物性のオイルで、木の呼吸を妨げず木目がきれいに仕上がりますし、厳しい基準を満たしているので、赤ちゃんでも安心して遊ばせることができます。

 

 

 

 

 

コマというおもちゃ

九州では、地域ごとに様々なコマで遊んできました。八女和こま、博多こま、佐世保こま、平戸こま、肥後こま、島原こま、など。九州のコマは、芯が独特で、鉄の芯がコマの下だけについています。芯が上まで通っているコマとは違った難しさがあり、なおのこと回せたときの達成感はすばらしいです。重さがあって勢いがよく、大勢でぶつけあう「ケンカゴマ」をして遊びます。芯を自分で調整するのも九州のコマの特徴ですが、「家にカナヅチが無い」と言われることもあり、今は調整してから販売しています。

 

 

 

日本で一番回しやすい「ラクコマ」

コマは全国の幼稚園、保育園から注文が来ていて、たくさん届けています。ところがある時に聞いたのが「コマを回せないまま卒園する子どもたちがいる」という実態。コマを回せた時の達成感を知らない子が増えたら、いつかコマで遊ぶという文化が無くなってしまう、と危機感を持ち、コマ回しの入門版、日本で一番回しやすいコマを作ろうと取り組み始めたのが「ラクコマ」でした。
ヒモをしっかり巻けるよう裏にらせん状の溝を彫り、また、芯と本体を一体型で木を削り出してブレを減らし、よく回るように工夫しています。また室内でも遊べるように、芯も丸く仕上げています。

 

 

 

自然に姿勢がよくなる「ぐっポス」

ぐっポスは、福岡県工業技術センターのインテリア研究所の人が小学校の先生の依頼で開発し、隈本木工所が八女杉で製品化しました。3Dターニングマシンも使いますが、仕上げは4種類の紙やすりを使い分けながら、一つに数十分をかけて磨きます。杉材ならではの柔らかい手触りです。福岡産業デザイン賞で大賞をもらい、東京のギフトショーでは新製品コンテストにおいて大賞になり、九州の各テレビ局の他、NHK「あさイチ」でも取り上げられるなど、注目されています。
使い方は簡単で、ぐっポスを机に置き、筆記具を持たない側の手でつかむというもの。肩が自然に平行を保ち、姿勢がよくなります。意外なことに購入者の4割が大人で、肩こりや腰痛が軽減した、と喜ばれています。

 

 

 

 

材料を手に入れる苦労

実は、材料が年々手に入りにくくなって困っています。コマには長年佐賀のマテガシを使ってきましたが、木を切る人がいなくなり、昨年一年間は新しい木材が手に入りませんでした。福岡県和ごま競技普及協会の人達と一緒に山を見て回り、宗像でよい木を見つけたので、山の所有者と地域の森林組合の方々に協力して頂き切り出してもらいました。
また、コマの芯は、ずっと作ってくれていた鍛冶屋さんがついに廃業してしまいました。ある程度ストックはありますが、いずれは自分たちで用意しなければなりません。

 

 

 

木育(もくいく)

木育とは、「木が好きな人を育てる活動」と考えています。木が好きな人が育つことで、林業や木を使った産業が元気になり、地域が活性化することが目標です。日本は有数の林業国なのに、木製品を使う場面が減り、木を伐らなくなりました。茂り過ぎた森は中まで光が届かなくなり、荒廃してしまいます。子どものうちから地元の木材を使ったおもちゃに親しんでもらい、木の温かみを体験してもらうことは、木が好きな人を増やし、木を使う場面を増やすことにつながると考えています。

 

 

 

参加者との質疑応答

ドイツ製の塗料を使っているのはなぜですか?

ドイツでは基準が厳しく、使う側にとってはより安心できる塗料だからです。リボス、オスモはお客さんもご存知の方が多く、支持していただいているようです。もちろん日本製にもよい物があるはずですが、まだ勉強不足で採用に至っていません。

昔はコマでよく遊びました。

いわゆる昔遊びは、自分たちでルールを作るため、そこに「子ども社会」ができました。ケンカをしても限度がわかっていますし、年上の子は下の子の面倒をみたり、遊び方を教えてあげたりしたものです。大勢でまた一緒に遊び、コマの回し方を教えたり、ケンカゴマをしたりして遊んでもらいたいです。

感想などアンケートの声 (一部)

  • 九州産の木を使っている点がいいし、さわった時に木のぬくもりを感じました。
  • 久しぶりに子どもの頃に戻って良い時間を過ごしました。ありがとうございました。
  • 「ぐっポス」は肩や腰にもとても良いので、高齢者にも良いと思いました。木の優しさ、手ざわりにゆっくりした気持ちになりました。
  • 森は定期的に木を切る必要があること、ぐっポスでの木のやわらかさ、材料がなかなかみつからなくなっていること、が印象に残りました。
  • 「ぐっポス」はテレビで拝見して知っていましたが、実際に持ってみて、木の温かみと安定感を体感しました。若い社員の方も入社される予定で、その方のためにもがんばろうとイキイキされている社長のお話が印象的でした。
  • コマ、木のおもちゃに対する熱い思いが伝わってきました。
  • 独楽回しが出来ない子どもや大人でも気軽に回せる「ラクコマ」を開発されたことは、日本の遊び文化の伝承につながっていることに感銘を受けました。
  • 使う人のことを考えた、やさしく、安全な商品作りに感動しました。隈本さんのお人柄がよく表れています。
企業情報

独楽工房 隈本木工所

本社: 福岡県八女市吉田1507-3
TEL :  0943-22-2955
HP :  http://www.yamegoma.jp/