2015年11月 林農園
2015/12/01
今回のご出演は、朝倉市杷木で代々農業を営んでおられる林農園でした。
お話してくださったのは、農園代表の息子さんの林誠吾氏。
以前は福岡で仕事をしていましたが、帰るたびに耕作放棄地が増え、荒廃していく故郷の風景を見ていられなくなったそうです。地域をなんとか良くしたいと強く思い、農業を継がれました。
地域の農業、農村風景を守りたい
朝倉地域は、筑後川の豊かな水に恵まれ、南斜面で日当たりもよく、内陸部ならではの寒暖の差もあって、果物作りには最適な土地です。昔から柿や梨、ブドウなど、果物が盛んに栽培されてきました。
そんな名産地でも、担い手の高齢化、後継者不足は深刻です。林さんは、自宅農園で梨、柿、カボス、米をつくりながら、同世代の農業者と一緒にグループを作り、都市部で料理会を開いて朝倉のことや朝倉産農産物をPRしたり、高齢化で手が回らなくなった近隣の田畑のお手伝いなどをしています。
また、WWOOF(ウーフ)のホストとして、国内外の農業体験希望者も受け入れています。
国内だけではなく、ドイツやフランス、香港などからも受け入れ実績があり、農業体験はもちろん、日本の一般家庭の日常生活を楽しんでもらっています。
*WWOOF:World Wide Opportunities on Organic Farms(世界に広がる有機農場での機会)
受け入れ先(ホスト)は農業体験の機会・宿泊場所・食事等を用意し、手伝う側(ウーファー)は労働力を提供する仕組み
農園の周辺には、有名なレストランや蕎麦屋、林田温泉、小京都と呼ばれる秋月、小石原焼きなど魅力的な場所やものがたくさんあります。
まずは朝倉に足を運び、関心をもってほしい、そして朝倉で作られる農産物や、農業のある風景に愛着を感じてもらいたいそうです。
梨作り80年
梨栽培だけでも80年にわたって取り組んでいる林農園。
8月に収穫する幸水、豊水から、11月の日迎(ひむかえ)まで6品種を季節の移り変わりとともに栽培しています。
春は花摘みに追われます。梨の花はバラ科の白いきれいなものですが、枝についた数そのままを全て実らせると、ゴルフボール位の大きさになってしまうため、花見を楽しむ間もなく100分の1の数になるまで花を摘み取ります。
そして養蜂場からレンタルしたミツバチに受粉させます。
梨は花の香りが薄いので、注意しておかないとミツバチはよその花に浮気してしまうこともあるそう。
梨の花が満開になるピークをよく見定めてミツバチを放します。
ようやく結実したものを、今度はよく選んで2回間引きし、選びぬいて残したおよそ10万個の実の一つひとつに袋掛けをしていきます。
夏に始まる収穫は晩秋まで続きます。
冬の間は梨の木にお礼肥えをやり、剪定をし、作業しやすい樹形になるよう、枝の誘引(ゆういん)をして1年が過ぎていきます。
低農薬、無化学肥料栽培で果物本来の美味しさを引き出す
果物は病虫害に弱く、中でも梨の栽培は黒星病との闘いとも言えます。
それでも、虫の動きや天候の変化などをよく観察して農薬を使うタイミングを見極めることで、農薬の使用を必要最小限に抑えています。
除草剤も一切使わず、生えてくる雑草は刈り取って、たい肥にします。
肥料は、杉の皮をベースにしたたい肥、発酵鶏糞、菜種の一番搾りの搾りかすなど有機質肥料を使い、微生物の働きを最大限に利用した土づくりをしています。
そのおかげで梨本来の美味しさ、食味・甘味を引き出すことができています。
加工品の数々
苦労して育てても、強風で傷つくなどすれば出荷できなくなります。
そこで取り組んでいるのが加工品作りです。
ドライフルーツやドレッシングなどのほか、のどに効く漢方薬として中国で昔から有名な「養肺膏(ようはいこう)」も、農園作業場で手造りしています。
梨・生姜・はちみつを、時間をかけゆっくり煮詰めています。
そのまま舐めても、お湯で溶かしても美味しく、紅茶などに入れるのもおすすめです。
試食タイム
今の時期に旬を迎えている新興(しんこう)、林農園オリジナル日迎(ひむかえ)、富有柿を試食させていただきました。
参加者との質疑応答
試食した「日迎(ひむかえ)」という品種は初めて聞く。
林農園オリジナルの品種。30年ほど前、梨の研究で各地を尋ね歩いていた時にもらった枝を接ぎ木し、実った種から苗を育てる試行錯誤を繰り返し、選抜した個体。貯蔵に向き、11月に収穫して4月くらいまで美味しく食べられる。花のような香りが楽しめるのも特徴。
収穫する時期によって美味しさは違う?
早くにちぎると長持ちはするが、甘みは少ない。林農園ではなるべく甘みの多いものを出したいのでぎりぎりまで完熟させて収穫し、すぐに出荷するようにしている。
美味しい梨の見分け方は?
全体にまんまるいものが良い。とがっていたり、アーモンド型をしていたりするものはおそらく二番果で、葉などになるつもりだったのが余裕があって実になったもの。甘みは重力にしたがっておしりの部分に集まっているので、ひっくり返しておいておくと、糖分がじんわりひろがって全体が美味しくなる。熟しているかは色で判断。夕方に収穫すると夕焼けで見間違えることがあるので、林農園では昼間のうちに収穫することにしている。
どこで購入できる?
天神イムズや千早の「ナチュ村」、博多リバレイン「九州逸品倶楽部」、「道の駅原鶴」など。杷木には林姓が多く、農園のロゴを作ったのでそれを目印にしてほしい。
感想などアンケートの声 (一部)
- 大変誠実にお話をされていて、そのお人柄通り、まじめに経営されていることがよく伝わってきました。林農園だけでなく、朝倉の将来を考えておられることに、応援したくなりました。またこんなに誠実に農作物を作っている話をきくと、よそからのものは買えません。後継者問題が心配ですが、がんばってほしいです。
- 一個の梨ができるまで大変な手間暇がかかっていることをあらためて認識しました。安心・安全の配慮に感謝です。
- 農園の仕事は年中多忙で想像以上でした。日迎は甘く香りが良い。新興は適度な酸味があり、美味しい。
- 日迎は食味がなめらかで香りがよく、美味しくいただきました。
- 梨にこんなに種類があるとは知りませんでした。ご苦労されて育てられた梨を今後はもっと味わっていただきたいと思いました。
- 機会をつくり、農場を訪ねさせていただきたいと感じました。