わいわい塾

開催レポート

2015年5月 JR九州ファーム(株)

2015/05/20

今回は、多角化を進めるJR九州の35番目のグループ会社、JR九州ファームから常務取締役営業部長の内野さんにお越しいただき、九州内に6つある農場のうち、とくに福岡県飯塚市にある内野宿養鶏場「うちのたまご」について詳しくお話を伺い、試食をさせていただきました。

 

 

 

農業の分野から九州を元気にしたい

 株式上場を目指すJR九州が現在取り組んでいる経営計画のキーワードは、「成長と進化」「地域を元気に」、そして「誠実」の3つです。

「成長と進化」については、韓国への船の運航やマンション建設など、様々な分野のグループ企業を設立して挑戦を続けています。その中で35番目に誕生したJR九州ファームは、農業の分野から「九州を元気にする」ことを目指しています。

また、企業が農業生産法人を作るときは既存の農家に任せがちですが、「誠実」であることも目標に掲げているJR九州ファームでは、自分たちにできることには手間を惜しまず、自分たちで取り組んでいます。数名が本社にいる他は、100名余の社員は現場に出て作業をしています。

社員は元JR九州の社員で、以前は駅長や車掌など鉄道関連の業務についていた人たち。農業や食に関しては全くの素人ですが、先生には「教えやすい」と言われます。安全に、時刻通りに電車を走らせることに従事していた鉄道マンの気質がプラスに働いて、先生の教えや、農業の基本・ルールを大事にできていると思います。

 

美味しさのひみつは生命力「うちのたまご」

 「うちのたまご」は飯塚市内野宿で生産しています。 特徴は、白身がしっかり盛り上がり、2段になっていること。卵は白身の部分がヒナになります。つまり白身が元気だったら、その卵は1つのいのちとして元気だということです。

実は、卵を選ぶときに注目されることの多い黄身は、人間が操作をしやすい部分です。パプリカを大量に食べさせれば黄色みが強くなり、タンパク質をたくさん摂らせれば、指でつまんで持ち上げられるほど固くなります。

一方で、人の力ではなんともならないのが白身です。しっかり盛り上がる白身は、健康な親鶏から生まれた、生命力にあふれた卵だからこそのもの。実際に、「うちのたまご」は受精させていれば元気なヒナがかえります。

ちなみに「有精卵」として売られている卵の多くはヒナになりません。誤解されやすいのですが「有精卵」という名称は、単におんどりとめんどりを一緒に飼えばつけられるもの。受精卵とは限りませんし、何より白身に力が足りないことが多いのです。

 

親鶏の健康のために鶏の福祉を考える

生命力にあふれた卵を生めるのは親鶏が健康であればこそ。 「うちのたまご」では親鶏の健康のために「アニマルウェルフェア」という考え方を取り入れています。家畜にとって快適な飼育環境を整えようという考え方です。

 

①鶏が喜んで食べる美味しいエサと水

とうもろこしや魚粉、大豆など栄養に配慮したエサを、毎日食べる分だけ開封して与えます。エサを常に新鮮な状態に保つことで、魚粉などのくさみが出ません。卵嫌いの方がおっしゃる「特有のくさみ」が「うちのたまご」に無いのもそのためです。水は敷地内に掘った井戸から湧く天然の地下水を与えています。

 

②衛生的な鶏舎

親鶏は15か月間飼育すると新しい親鶏と入れ替えます。鶏舎をいったんカラにしてきれいに水洗いと消毒をし、乾燥させてさらに1ヶ月休ませることで、サルモネラ菌などの病原菌が常在しない、清浄な環境を保ちます。そのおかげで、鶏に抗生物質を与える必要がありません。

 

③歩き回れる広さを確保

「ご近所までお散歩」の欲求を満たす広さを確保しています。よく歩いて運動しているので、肉が地鶏のように締まっています。

 

④環境の整備

開放型鶏舎なので、新鮮な空気が入ります。熱や光は鶏の様子を見ながら必要に応じて、カーテンやブラインドで調節します。

 

⑤鶏の社会性を尊重

100羽ずつを区切ったファミリーケージを採用しています。鶏の世界にも序列があり、ケージに入れてしばらくは、つつきあいのケンカをしていますが、じきに互いの顔を覚え、序列が定まると落ち着きます。これが大型鶏舎で1万羽を一緒にしているようなところでは、序列がいつまで経っても定まらず、毎日が戦争のようになってストレスがかかっているはずです。

 

 

常温で1ヶ月保存できる卵

「うちのたまご」はサルモネラ菌のいない鶏舎で、保菌しない親鶏が生むので安心・安全です。また、親鶏が健康なため、殻の表面にクチクラ層がしっかりできています。クチクラ層とは、空気は通してもカビや細菌を通さないタンパク質の膜で、産み落とされた瞬間に作られるものです。洗うとはがれてしまうので、品質を保つためにあえて洗いません。

これに対して、多くの卵はサルモネラ菌で汚染されていることを前提にして取り扱われています。厚生労働省では生食できる範囲を「10℃以下で冷蔵した3週間以内のもの」と定めています。これは人体に影響が出る程度にサルモネラが増殖するまでの期間ということです。またクチクラ層があってもぼろぼろであることが多いので、「洗うべし」と卵の取扱マニュアルで定めています。「うちのたまご」はサルモネラ菌が無く、クチクラ層もしっかりしていて、常温で1ヶ月置いても大丈夫なほど心配が無いから洗わないのですが、このマニュアルがあるために販売できる場所が限られています。

 

「八百屋の九ちゃん」オープン

九州の農業は実力があるのに、ブランド力がまだともなっていないのが惜しいと感じています。「農業で九州の元気を応援する」という思いを込めて、九州のおいしいものを集めた八百屋「八百屋の九ちゃん」をオープンしました。

JR九州ファームの農産物を始め、厳選した「匠の野菜」「匠の果物」、九州産の原材料を使用した調味料や加工品を扱います。栄養士のスタッフがいるので、野菜の旬、栄養はもちろん、献立のヒントもお尋ねください。

このお店から九州の農産品のすばらしさを発信し、「九州産」のブランド力をもっと浮揚させたいと考えています。

 

☆参加者との質疑応答

入れ替えた親鶏はどうなりますか?鶏肉として食べても美味しいのでは?と気になります。

食鳥会社に卸しています。実は加工された肉の一部を引き取って、関連する飲食店で肉そぼろに使っています。卵も親も食べる、というのがなんとなく可哀そうで、「うちのたまご」の親鶏とはうたっていません。地鶏のようにしっかりとした肉質で美味しいです。

「うちのたまご」はどこで買えますか?

博多駅マイング、博多阪急、岩田屋、小倉井筒屋、スーパーASOなどで販売しています。6個360円+消費税。1個あたり60円になりますが、その半分はエサ代です。マイングでは「うちのたまご」を使ったケーキやプリンも販売しているほか、イートインでたまごかけご飯なども召し上がっていただけます。

羽田空港で見かけました。

羽田空港のお店にいらっしゃるのは、9割以上がたまごかけご飯などイートインの利用者です。体にいいファストフードとして、空港の地上勤務の人がよく来店されています。東京ではこの羽田空港のほか、スカイツリー内のソラマチ、赤坂BIZタワーなど、関西では西宮阪急などに、卵の販売コーナーやイートインを設置しています。詳しくはHPをご覧ください。

八百屋の九ちゃんは増えますか? 自宅の近くに欲しいです。

千早の店が成功したら増やしていきます。皆さんで是非ご利用ください。

卵というとコレステロールが気になります。

コレステロールで気にしないといけないのは、善玉と悪玉のバランス。JR九州会長の唐池は柔道部出身で体格が良いのですが、「うちのたまご」を食べ続けて悪玉コレステロールの値が下がったそうです(笑)。

  • 試食がとてもおいしかったです。1ケ60円の卵はなかなか手が出せませんでしたが、説明を聞いて是非買いたくなりました。
  • 清潔な鶏舎で新鮮なエサを食べている鶏の卵であることがわかった。お値段もなっとくです!自分が普段購入している卵が不安になるくらいです。
  • 動物も人間も、栄養・衛生・行動・環境・社会が大切・・・・・本当ですよね。
  • 卵を割って皿にのせた時の三重になった様子がすごくきれいでした。
  • 卵についての認識が変わりました。
  • 卵の話は驚きの連続でした。白身の方が大事とは思いもしませんでした。層になった白身、透き通った白身、においもせず、よい商品でした。
  • 卵を割った時、白身の盛り上がりがふつうの卵の2倍くらいあると思いました。食べても味もよかった。美味しかったです。
  • いつも何気なく食べている卵が、親鶏によってこんなに違う、奥が深い、ということがわかった。
  • 今までの鶏舎のイメージと違い驚いた。アニマルウェルフェアは納得できる。サルモネラ菌がいないことも印象に残った。
  • すごく強く想いが伝わってきました。各駅に八百屋コーナーと卵コーナーが広がっていくことを期待しています。
企業情報

【JR九州ファーム株式会社】
佐賀県鳥栖市本鳥栖町302-26
TEL 0942-85-8237

http://www.jrkf.jp/

【JR九州ファーム株式会社 内野宿養鶏場】
福岡県飯塚市弥山1133番地1
TEL 0948-72-0501

http://www.jrk-eggfa